羊のラパAI講習会@茶路めん羊牧場 その2

皆さんこんにちは、冬を取り戻すような気候ですね。
十和田は一面真っ白です。
昨日は今シーズン初の県内全地点真冬日だったらしいですよ。
なにがびっくりって今シーズン初なの!?ってことです。
全地点真冬日って結構あるんですが、今年はまだなかったんですね~
今日もギリギリとしばれてるので、二日連続になりそうですよ。


さて、今回は前回の続きです。
いよいよ羊のラパAI講習会本番です。


こちらは今回講師を務めてくださった福井先生です。
日本での羊のラパAIの先駆者で、日本でのほとんどの施術をこちらの福井先生と、あとで紹介する河野先生が行っています。
自前の仕事道具はかなり年季が入っていました。



今回使う精液の活力を調べています。
とても良いとは言えないようですが、ラパAIは子宮角に直接注入するので、多少精液の状態が悪くても、妊娠の可能性は十分ありえます。


保定組の手順をおさらい中です。

羊をつかまえる→羊を仰向けに逆さにする→保定台に後肢を押さえる→福井先生(施術者)の方に向ける→丸太を土台の下に入れて高さを調整する

という具合です。


こちらの保定台、福井先生のお手製で第4号機らしいです。
鉄工所にオーダーメイドしたらしいのですが、4号機でようやく落ち着いたそうです。
日本ではこのような専用の道具が売っていないので(ヨーロッパでは売っていたりする)自作するしかありません。
十和田農場でも10月に実施するにあたって、この保定台だけは農場で手作りすることになりました。
そのため前日はこいつの写真撮影と採寸にいそしみました。


さて、いよいよ施術です。
このように、三人がかりで保定します。
羊が大きいので、とても体力を消耗しました。
羊の腹膜に穴をあけ、二酸化炭素ガスを注入して腹腔に空間を作ります。
穴から腹腔鏡をいれ、のぞきながら子宮を探します。
子宮の位置を確認し、これまた手作りの注入器で子宮角に精液を注入します。


注入し終えたら腹腔に残った炭酸ガスを抜き、穴の開いた腹膜を医療用ホチキスで止めて消毒します。
抗生剤を投与し、羊の保定を解除して一連の流れは終了です。


かかった時間は、1頭当たり10分から20分程度です。
羊のあばれ具合や、子宮の位置などによって時間が前後します。
この処置を麻酔なしで行うのですから、羊もたまったものではありません。
開ける穴は直径1㎝くらいありそうな針のようなものを使います。
開けるときは、渾身の力をこめてぐっと差し込みます。
ボンというような鈍い音が聞こえ、思わず「うわっ」と声を上げてほどの光景でした。



こちらは、精液を注入器に入れて子宮に注入する準備をしているところです。
こちらの写真の方が河野先生です。
10月に行われた十和田農場のラパAIに協力してくださった先生です。
凍結精液を解凍し、お手製の注入器に吸い込み準備する係です。
お手製注入器は、シリンジにストローのような細長い管を取り付け、さらに先端にとても細い針を固定したものです。
精液を選定し、活力を確認し、注入器に吸い込んで、術者が子宮の準備ができたタイミングで注入器を腹膜の穴から挿入します。
術者が腹腔鏡で子宮を確認しながら、子宮角に注入器の先端の針を突き刺したら合図し、注入器を持つ助手がシリンジをゆっくり押して精液を注入するという流れです。
福井先生と河野先生はずいぶん長いお付き合いで、その作業も阿吽の呼吸で進められていました。

今回の講習会でわかったことは、すごく道具が多いということと、人手が結構必要だということです。
我々は動物病院がありますし、研究機関ということもあり、一通りの道具は揃えられますが、一般の農家さんはそうもいきません。
今回使用した道具をそろえるとなると、結構な金額が必要になります。
そもそも、今回使用した道具は福井先生のお手製のものがいくつもあり、流通すらしていないというのが現状です。
また、保定台はあるものの、保定台のみで羊を保定することはできません。
必ず術中に左右の後肢を押さえる人と、前肢や頭を押さえる人が必要です。
さらに、術者のほかに、精液を調整し注入器の準備をする助手と、できれば術者に様々な道具を手渡す人が必要です。(内視鏡から目を離せないため)

以上の点から、牛で行われている一般的な人工授精のように、手軽にできるものではないなあと実感するのでありました。

それでも十和田農場は大学の附属機関です。
研究機関として、この技術の普及ともう少し手軽にできるような開発を関係研究室とともに推し進めていきたいと思っています。

この日は、22頭の羊に昼食抜きでラパAIをほどこし、終了したのは15時前でした。
本来はこの後のお疲れ様懇親会に参加の予定でしたが、フェリーの都合でまっすぐ十和田に帰ることとなりました。
茶路めん羊牧場さんの羊のフルコースを楽しむことができず、残念でしたがとても有意義な時間を過ごさせていただきました。

ご協力くださいました茶路めん羊牧場のみなさん、福井先生、河野先生、レア・シープ研究会のみなさまには深く感謝申し上げます。(今更ですが)
今度は十和田でのラパAIの様子をご紹介したいと思います。

コメント

人気の投稿